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シン
精神保健福祉士/相談支援員
精神保健福祉士/相談支援員。基幹相談支援センター勤務。20代で精神疾患を患うも、心理療法等により克服し社会復帰。40歳で障がい福祉職に転職。学んだ全てを「生きやすくなる知恵」として整理しながら、生きづらさや心の葛藤を抱えた人への支援に従事している。
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マインドフルな認知的共感でラポールを深める方法|共感と相互理解【3】

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目次

はじめに

前回の記事では、共感力が高すぎて生きづらさを抱える人に向けて、自分の気持ちを大切にするための「マインドフルな共感」についてお話しました。

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今回はそこから一歩進んで、「相手を深く理解する共感力の使い方」というテーマでお話していきます。

人と会話をしているとき、自分の心の状態を冷静に捉えられるようになると、相手が置かれている状況や気持ちに、より関心を向けられるようになります。

たとえば、誰かの話を聞きながら「この人はどうしてそう感じたんだろう?」「その状況、自分ならこうだけど、相手はどうなんだろう…??」と想像したり質問したりすることで、

そっかー!それは嬉しかったね!!
彼もきっと喜んでくれてるんじゃない?!

と、相手が経験している出来事を含めて、その感情を理解していくことができます。

こうした「自分の感情に巻き込まれず、相手の立場に立って寄り添う力」のことを、心理学では「認知的共感」と呼ばれています。

  • 「相手ともっとわかり合いたいのに、どう伝えたらいいかわからない」
  • 「共感しているつもりでも、なぜか気持ちがすれ違ってしまう」

——そんな悩みを抱える人に向けて、今回は、「認知的共感を使ったラポール(信頼関係)の築き方」をお伝えします。

あなたの繊細さや思いやりを、大切な人と心を通わせる力に変えていけるよう、少しでもヒントになれば幸いです。

1.認知的共感とは

共感には、「情動的共感」と「認知的共感」という2つの側面があります。

  • 情動的共感:他者の感情を、まるで自分のことのように感じる心の働き
  • 認知的共感:他者の立場に立ち、状況や背景等からその感情を理解しようとする心の働き

まずは、この2種類の共感の違いを、具体例を挙げながら説明します。

1-1.情動的共感

情動的共感」とは、例えば、悲しんでいる人を見て、自分も悲しい気持ちになるといった心の働きです。

たとえば、

Aさん

また面接だめだったよ…

Bさん

そうなんだ…頑張って練習してたの知ってるから、俺も悔しいよ…

というように、「情動的共感力」のおかげで、私たちは、他者の感情を感じ取り、思いやりや支え合いの気持ちを持つことができます。

ただ、この「感じる共感」だけだと、相手の気持ちをきちんと理解するには不十分です。

なぜなら、それは「相手に自分を重ね合わせることで生じる自分の気持ち」を感じている状態だからです。

1-2.認知的共感

一方「認知的共感」とは、例えば、悲しんでいる人を見たとき「この人はなぜ悲しんでいるのだろう?」と、相手の立場に立ってその気持ちを理解しようとする心の働きです。

たとえば、

Aさん

また面接だめだったよ…

Bさん

そうなんだ…。
あんなに練習してたのになんでだろう…

どういう質問をされたの?

Aさん

もしあなたが社長だったらどうしますか?
だって…

Bさん

そうか…その質問はひどいね!
びっくりしたんじゃない?

Aさん

そうなの…びっくりして、頭の中が真っ白になった…

というように、相手の視点に立ってその場面を想像しながら、その人がどんな状況でどんな気持ちを味わったのかを、寄り添いながら確認していきます。

そんなふうに、対話を重ねながら相手の気持ちを「理解する共感」それが「認知的共感」です。

認知的共感」を意識することで、相手の気持ちや感じ方、ものの見方などについて、より深く理解できるようになります。

また、相手にとっても、「表面的な共感ではなく、自分の体験をきちんと受けとめた上で理解してくれた」といった信頼感や安心感が生まれ、より深いつながりを築くことができます。

2.マインドフルな認知的共感で築くラポールの4ステップ

ここからは、認知的共感を意識し、どのように信頼関係を深められるかについて、次の4つのステップに分けて解説していきます。

  1. 相手の感情を感じ取る(情動的共感)
  2. 自分の心を観察する(マインドフルネス)
  3. 相手の視点に立つ(認知的共感)
  4. 心が通い合い、信頼感が深まる感覚を共有する(ラポール)

(会話の事例を使いますが、共感がテーマなので、読者のあなたは、聞き手である「Bさん」だと想定して読み進めてくださいね。)

STEP
感情を感じ取る(情動的共感)

情動的共感」は相手の感情に反応して自然に心に湧き上がります。

必ずしも言葉を返せなくても構いません。

表情や態度、相づちのトーンなどから「どうしたの?なんでも話してね!」といった安心感が相手に伝わればOKです!

Aさん

また面接だめだったよ…

Bさん

そうなんだ・・・あんなに頑張って練習したのに 〜!
悔しいねー!

Aさん

うん…!めっちゃ悔しい~!!

STEP
自分の心を観察する(マインドフルネス)

会話の最中は、相手に刺激されて、様々な思考や感情が心の中に浮かびますよね。

ただ、自分の思考や感情に巻き込まれてしまうと、相手の話から意識が離れてしまいます。

マインドフルネスを使って、自分の心の状態に気づきつつ、うまく距離を取りましょう。

Bさん

俺も今、話したいことがあるんだけどな…)

Bさん

(いやいや、今はAちゃんの話を聴くのが優先だ…)

STEP
相手の視点に立つ(認知的共感)

自分の思考や感情と距離を取れたら、相手の視点に立って、その出来事をイメージしていきます。

まるで、相手の経験を一緒に追体験しながら辿っていく感覚です。

「自分だったら、きっとこう感じると思う。あなたはどうだった?」といった気持ちで、実際どうだったのかを、優しく問いかけながら、丁寧に確認していきましょう。

Bさん

やっぱり緊張しちゃった…??《※1》

《※1》質問します

Aさん

最初の5分ぐらいはね、緊張せずに自然体でいけたんだ。

けど、途中で意地悪な質問されて、テンパっちゃって…

Bさん

えー! 意地悪な質問か… なんて聞かれたの??《※2》

《※2》共感の言葉を返しながら質問を続けます

Aさん

もしあなたが社長だったらどうしますか?
だって…

もう、超イジワルだよねー!

Bさん

(なるほど…俺だったらこう答えるかな…)《※3》

《※3》「自分だったら~」と浮かんだらマインドフルネスを意識します

Bさん

(いやいや…Aちゃんにとっては、そんなことはどうでもいいな…)
《※4》

《※4》「自分=相手ではない」ことと思い出し「相手の視点」に集中します

Bさん

えー!急にそんなこと聞かれたんだ!
それは意地悪な質問だね!
テンパっても無理もないよ~

Aさん

でしょ~!
私別に、社長になりたくて応募したわけじゃないのに!

Bさん

そうだよね…

Bさん

大変そうだし…

Aさん

大変そうだし…(笑)

Bさん

(笑)

Bさん

それにさ、俺も見たけど、
ホームページにそんな感じのこと全く書いてなかったよね?!《※5》

《※5》質問しながら相手が安心できる糸口を探します

Aさん

書いてなかった!!

Bさん

うん、だったら、Aちゃんは何も悪くないって俺は思う。
相性の問題だよ!

Aさん

Bくんもそう思うよね?!
良かったー
ありがとう…
Bくんのおかげで落ち着いてきたよ…

STEP
心が通い合い、信頼感が深まる感覚を共有する(ラポール)

相手の視点に立ち、対話を重ね、経験や感情を両者が分かち合えたとき、信頼関係という強力なが生まれ、お互いのラポールは一段と深まっていきます。

Aさん

実は私ね…、他の応募者の人たちは、みんなそういう質問にも柔軟に答えられて、答えられなかった私は準備不足なのかな…?

って、めっちゃ落ち込んでたんだ…

あれだけ面接の練習したのに、またダメだったって…

Bさん

まさか!
これ以上、何を準備するのさ、ってぐらい頑張ってたじゃん!

Aさん

でもさ…、私って柔軟性ないじゃん…?

だから、準備は頑張れても、本番でなかなか答えられなくてさ…
失敗ばっかりでさ…(泣)

Bさん

でも世の中にはさ、
「あっこのコ、めっちゃ準備してきたんだな!素晴らしい!!
本番になると苦手らしいけど、そこはOJTで場数踏んでくれればいいし!」
って言って、《準備できるところを長所として》見てくれる面接官だってきっといるはずじゃん?!

Aさん

そっかぁ…本当にそんな人いるかなぁ…??

Bさん

いると思う!
それに、Aちゃんには他にも良いところがいっぱいあるって、俺は知ってるじゃん?

だから、その良いところをちゃんと評価してくれる会社が絶対にある。

一緒に探していこうよ!! 応援してるから!

Aさん

ありがとう!!
Bくんが、そう言ってくれたから、すごい安心した
本当に救われたよ
信じてみるよ。

まとめ

――あなたの気持ちをちゃんと知りたい! 私の理解は合っているかな…??

今回ご紹介した「マインドフルな認知的共感」は、そんなもどかしい気持ちを相手にぶつけずに伝えながら、信頼関係を深めていける強力な“スキル”です。

自分の心の動きを観察し、感情や思い込みと距離を取りながら、相手の視点に立って丁寧に寄り添うことで、ただの「共感」から一歩進んだ「理解と信頼の対話」が生まれます。

あなたの持つ思いやりや繊細さが、相手との心のつながりを育む力になるように願っています。

参考文献

シン
精神保健福祉士/相談支援員
精神保健福祉士/相談支援員。基幹相談支援センター勤務。20代で精神疾患を患うも、心理療法等により克服し社会復帰。40歳で障がい福祉職に転職。学んだ全てを「生きやすくなる知恵」として整理しながら、生きづらさや心の葛藤を抱えた人への支援に従事している。

シン

ここまでお読みいただき、ありがとうございます!

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