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シン
精神保健福祉士/相談支援員
精神保健福祉士/相談支援員。基幹相談支援センター勤務。20代で精神疾患を患うも、心理療法等により克服し社会復帰。40歳で障がい福祉職に転職。学んだ全てを「生きやすくなる知恵」として整理しながら、生きづらさや心の葛藤を抱えた人への支援に従事している。
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傷ついた心に自分の価値を取り戻す3つのステップ|自尊心を育てよう【1】

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目次

はじめに

私たちは、いつの間にか「自分には価値がないのかもしれない」という不安を抱え込んでしまうことがあります。

たとえば――

  • 就職活動で不採用が続くと、次の面接に申し込むことが怖くなったり
  • 失恋したあと、また誰かと出会うことに気持ちが向かなくなったり
  • 仕事でミスを叱責されたのを機に、会社を休みがちになってしまったり

やがては、挑戦したり、誰かと関わったりする気力が薄れ、気づけばひとりで抱え込んでいる……

そんな経験はないでしょうか?

そのような行動の裏には、「人間としての自分の価値」を否定する思いが隠れていることがよくあります。

  • 私を雇ってくれる会社なんて、ないんじゃないか
  • 私は結局、ひとりぼっちなんだ
  • 僕はもう、誰からも必要とされていない
  • 僕はいつも、人に迷惑ばかりかけている人間だ

——しかし、本当にそうでしょうか?

今回の記事では、私たちが、生まれながらにして既に持っている「無条件の人間の価値」についてご紹介します。

さらに、失敗や傷つく経験をしても、健全な自尊心を維持しながら、次の前向きな行動に切り替えていくための「3つのステップ」を解説していきます。

この記事が、あなたの心が少しでも穏やかになれるようなヒントになれば幸いです。

1.自尊心とは何か?

自尊心の定義

心理学者モリス・ローゼンバーグは、自尊心を次のように定義しています。

self-esteem is one’s positive or negative attitude toward oneself and one’s evaluation of one’s own thoughts and feelings overall in relation to oneself. (自尊心とは、自分自身に対する肯定的または否定的な態度であり、自分自身との関係において、自分自身の考えや感情を総合的に評価することである。)

(Rosenberg, 1965)

分かりやすく言い換えると、

自尊心とは自分の価値を自分がどう評価しているかという自分に向き合う心の姿勢のことです。

たとえば、何かに失敗したときに

Aさん

自分はダメな人間だ

と感じてしまう場合、自分の価値を否定的に捉えていることになります。

一方、たとえ失敗したとしても、

Bさん

今回はうまくいかなかった。次回は違うやり方を試してみよう。

と思えたとしたら、自分の価値ではなく、自分の行動に課題があったと捉えることができています。

このように、何かうまくいかないことがあっても、

——自分には価値がある。それは何があっても変わらない。

という自尊心でいられたら、次の行動へと前向きにチャレンジしていけます。

それでは、自尊心を健全に保ち続けるには、一体どうすればいいのでしょう?

2.本質的な自分(コアセルフ)

そこで、ストレス対処やレジリエンス研究の専門家、グレン・R・シラルディ博士が提唱する「コアセルフ(Core Self)」という考え方を紹介します。

2-1.本質的な自分(コアセルフ)とは?

(シラルディ, 2019. 参考に作成)

シラルディ博士によると、すべての人は「表面的な自分」と「本質的な自分」を持っているとされています。

  • 表面的な自分(外的要因):外見、資産、能力、業績、健康状態、行動…等々、人の生産的な価値に関わるもの
  • 本質的な自分(コアセルフ):永遠に変わらない無限の価値を持つかけがえのないもの

シラルディ博士は、「本質的な自分」には「無条件の人間の価値」が最初から備わっている、と述べています。

つまり、資産や地位などの「表面的な自分」がどれほど変化しても、その人の「人間としての価値」は決して変わらないというわけです。

2-2.無条件の人間の価値

これは、考えてみれば当然の話です。

なぜなら、たとえば、これまでバリバリ働いていた人が、ある日失業して無職になったら、その人は「人間としての価値」を失うのでしょうか?

あるいは、精神疾患で休職していた人が、リワーク支援などを利用しながら見事に職場復帰を果たしたら、その人は「価値のない人間」から「価値のある人間」になったのでしょうか?

——もちろん、答えはどちらも「ノー(NO)」です。そんなはずはありませんよね。

仕事に就いているかどうか、健康かそうでないか、独身か家庭を持っているか、容姿端麗かそうでないか、…。

そのような「外的な要因」とその人の「本質的な人間としての価値」とは、何の関係もありません。

すべての人には、生まれながらにして、「無条件の人間の価値」が既に与えられているのです。

すべての人は、この世界に必要だから、この世界に存在する価値を備えて、生まれてきたのです。

人間の中核的な価値というものは不変であり、個人的な業績などの外的要因を通して獲得することは不可能です。中核的な価値はすでに存在しているものなのです。
(シラルディ, 2019)

2-3.条件付きの価値

それでは、「無条件の人間としての価値」を既に持っているはずなのに、どうして私たちは、しばしばそれを忘れてしまうのでしょう?

——それは、私たちの社会は「条件つきの価値」を評価する仕組みにあふれているからです。

たとえば、

  • テストで良い点を取れば褒められる
  • 仕事で成果を出せば昇進する
  • 見た目が整っていれば人気が出る

等々、結果」によって評価される経験を、私たちは幼いころから何度も重ねてきたと思います。

そのため、知らず知らずのうちに、

  • ◯◯できたから自分には価値がある
  • ◯◯を持っていないから自分には価値がない

といった固定観念を植え付けられてきたわけです。

もちろん「結果」に価値がないわけではありません。能力や業績に対する評価も、この社会で暮らす上で必要ではありますが、「本質的な自分の価値」を変えるものではないということです。

3.本質的な自分の価値を見失わないために

ここからは、失敗や傷つく経験をしたときに、本質的な自分の価値を見失うことなく、前向きな行動を続けていくための「3つのステップ」を紹介します。

自尊心を育てる3ステップ
  • マインドフルネスを実行する
  • コアセルフと外的要因を切り離す
  • 「そんな私を愛してる」とつぶやく

ここから先のCさんのコメントは、就職活動の面接の結果、不採用のメールが届いた、という場面を想定しています。

3-1.マインドフルネスを実行する

批判や否定、拒絶や喪失など、生きている限り誰もがショックを受ける出来事を経験します。

そんなときは、まず、呼吸に意識を向ける「マインドフルネス瞑想」によって、ある程度(※)そのショックを和らげることができます。

なぜなら、呼吸を整え、心を落ち着ける時間を作ることで、副交感神経が優位に働き、脳が冷静さを取り戻すからです。

※近親者との別れなど、特にその影響が大きい場合は除きます。

Cさん

また不採用のメールだ…

Cさん

よし、呼吸に意識を向けよう

↓「マインドフルネス瞑想」の詳しいやり方は、以下を参考にしてください。↓

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3-2.コアセルフと外的要因を切り離す

(シラルディ, 2019. 参考に作成)

呼吸に意識を向け、心が落ち着いてきたなと感じたら、上のイメージ画像を頭の中に描き、

外的要因は、本質的な私の価値とは何の関係もない」ことを思い出してください。

Cさん

不採用という結果は、あくまで「外的要因」だ
私が「人として」否定されたわけでもなんでもない

前と変わらず、私は価値ある存在だ
私はこの世界に必要だから生まれてきたんだ。

「人としての自分」を否定しそうになったら、代わりに「自分の行動」を振り返ってみましょう

Cさん

今回は、会社の下調べが不十分だったかもしれないな…。

次の面接では、もっと前から準備して、ホームページの細かいところまでちゃんと読んでみよう。

3-3.「そんな私を愛してる」とつぶやく

——❝そんな私を愛してる❞

ここで、「そんな私」というフレーズに注目してください。

「そんな」という言葉は、「私」を否定も肯定もしていませんよね。

つまり、「そんな私を愛してる」というメッセージは、「たとえ何があっても私は私を愛している」と自分を受け入れ、抱きしめる心の姿勢を表しています。

失敗や不完全さと一緒に、自分をまるごと受け入れることで、自尊心は育まれます。

Cさん

私は完璧な人間ではない。

そんな私を、私は愛している。

まとめ

自尊心とは、「自分には何が起きても変わらない、人間としての価値がある」と自分の心を支える土台のようなものです。

たとえ、拒絶されたり、好ましくない評価を受けたり、努力が結果に結びつかなかったり…といった出来事に襲われたとしても、あなたが持つ「本質的な人間としての価値」は、決して失われることはありません。

あなたは、この世界に必要だから、存在する価値があるから、生まれてきたのです。

自分を否定したくなったときは、呼吸と心を落ち着け、「そんな私を愛してる」とつぶやいてみましょう。

その言葉が、自尊心を優しく育てていく第一歩になるはずです。

参考文献

  • Rosenberg, M.(1965). Society and the adolescent self-image. Princeton University Press. https://ci.nii.ac.jp/ncid/BA07417386
  • グレン・R・シラルディ(2019)自尊心を育てるワークブック[第二版] – あなたを助けるための簡潔で効果的なプログラム – . 金剛出版.(原著:The Self-Esteem Workbook: Second Edition). https://amzn.to/3ZvARBO
シン
精神保健福祉士/相談支援員
精神保健福祉士/相談支援員。基幹相談支援センター勤務。20代で精神疾患を患うも、心理療法等により克服し社会復帰。40歳で障がい福祉職に転職。学んだ全てを「生きやすくなる知恵」として整理しながら、生きづらさや心の葛藤を抱えた人への支援に従事している。

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