はじめに
- 相手の気持ちを考えすぎて、自分が疲れてしまう
- 自分の気持ちよりも、相手の気持ちを優先してしまう
- 人間関係そのものに疲れて、ひきこもってしまう
—— こうした経験はありませんか?
共感力が高いことは素晴らしい長所です。
しかし、情報があふれる現代では、共感しすぎることが「生きづらさにつながる」場合も多いですよね。
たとえば、SNSやニュース、グループチャットなどから、常に誰かの意見が流れ込む生活は、他者の気持ちに敏感な人ほど、振り回され、疲れ切ってしまうのではないでしょうか。
また、「距離を取ると嫌われるかもしれない」「関係が途切れるのが怖い」といった不安から、無理をして人と関わり、かえって心がすり減ってしまうこともあります。
そこで、今回は、
- 共感しすぎて疲れるけれど、人とのつながりは大切にしたい
- 他人の気持ちを尊重しながらも、自分の意見をきちんと伝えたい
- 自分が大切に想う人と、心から理解し合える関係を築きたい
そんな方に向けて、記事を4回に分け、「共感力を味方につけて良好な人間関係を築く方法」を紹介していきます。
あなたの心が、少しでも軽くなるような情報をお伝えできれば幸いです。
1.共感が生きづらさになるとき

1-1.共感の定義
まずは、次の会話の例を見てみてください。

あのさ、今日上司に褒められたんだ!



そうなんだー! 良かったじゃーん!
最近あなた、遅くまで頑張ってたもんね!
Bさんは、Aさんの嬉しそうな気持ちを自然に感じ取り、同じように嬉しい気持ちを表現していますよね。
また、「遅くまで頑張ってたもんね」と、相手の状況に理解を示す言葉も添えています。
Bさんから共感の言葉が返ってくることで、Aさんは「気持ちを分かってくれたんだね!」と感じ、両者の信頼関係は深まり、心の絆も強くなります。
社会心理学者のマーティン・ホフマン(Martin Hoffman)は、「共感」とは、
自分自身よりも他の人の状況によりふさわしい感情反応
引用:登張 (2023)
と定義しています。
つまり、「共感」とは「相手の感情を自分のことのように感じて反応すること」だと言えますね。
1-2.生きづらくなる共感①~パートナーシップ編~
それでは、「共感力が生きづらさにつながってしまう」場合の一例を挙げてみます。



それでさ、日曜日、一緒に買い物に行くって約束してたけど、疲れてるから家でゆっくりしたいんだ。いいかな…?



あ、もちろんだよ!
頑張ってたんだし、買い物に行くより休みたいよね…



(約束してたのに…)
この例では、Bさんは「一緒に買物に行きたい」という自分の気持ちよりも、「休みたい」というAさんの気持ちを優先しています。
たまにであれば良いかもしれませんが、このような関係が続くと、Bさんの不満が溜まるばかりになりそうですよね。
さて、Bさんは、
自分の気持ちを満たしつつ、相手の要求も大切にするにはどうすればいいのでしょうか…?
1-3.生きづらくなる共感②~職場の人間関係編~
今度は、別の例を挙げてみます。



先輩、さっきのプレゼン、緊張で全然ダメでした…。
私、向いてないのかなって思います…。



最初は誰でも緊張するよねー!
でも、全然そんな様子は見えなかったよ?
私の最初に比べたら、Cさんの方が全然うまくできてた(笑)
次のプレゼン、また一緒に準備しようよ!



(私のプレゼンの準備もやばいけど、放っておけないし…)
この例では、落ち込んでいるCさんに対して、Dさんが共感を示しています。
Dさんは「放っておけない」気持ちが強く、客観的に見ても、すごく優しい、頼れる先輩ですよね。
ただ、自分の時間や労力を削ってまで、後輩をサポートしたい、という姿勢が見られるため、ちょっと心配になります。
こんなとき、
自分の負担を過剰に増やすことなく、誰かのフォローも上手く進めるには、どうすればいいのでしょうか…?
まとめ
共感力は、相手の感情を自然に感じ取り、相手の状況を想像しながら理解しようとする心の動きです。
共感の言葉が返ってくることで、両者の心に「気持ちを分かってくれる相手」といった信頼感が生まれ、良好な関係に発展していきます。
ただ、自分の気持ちを置き去りにしてまで相手の気持ちに染まってしまうと、生きづらさや疲労を溜め込んでしまうリスクがあります。
バランスが難しいですよね…。
次回の記事では、「マインドフルネス」を取り入れ、自分と相手の感情を冷静に捉え、無理なく人間関係を築いていく方法をご紹介します。


参考文献
- 登張 真稲 (2023). 共感の概念と理論、役割について. 生活科学研究, 45, 41-50, 2023-03-31, 文教大学. 10.15034/00008183
- 松尾 良和 ほか (2008). Hoffmanの共感喚起理論の概観. 広島大学大学院心理臨床教育研究センター紀要, 6, 103-112, 2008-03-20, 広島大学大学院教育学研究科附属心理臨床教育研究センター. https://doi.org/10.15027/23564