はじめに
- 相手の気持ちを考えすぎて、自分が疲れてしまう
- 自分の気持ちよりも、相手の気持ちを優先してしまう
- 人間関係そのものに疲れて、ひきこもってしまう
—— こうした経験はありませんか?
共感力が高いことは素晴らしい長所です。
しかし、情報があふれる現代では、共感力が高すぎることが「生きづらさにつながる」場合も多いですよね。
たとえば、SNSやニュース、グループチャットなどから、常に誰かの意見が流れ込む生活は、他者の気持ちに敏感な人ほど、振り回され、疲れ切ってしまうのではないでしょうか。
実は、「マインドフルネス」を取り入れることで「誰かの気持ち」と同じように「自分の気持ち」を大切にできる勇気を持つことができます。
- 共感しすぎて疲れるけれど、人とのつながりは大切にしたい
- 他人の気持ちを尊重しながらも、自分の意見をきちんと伝えたい
- 自分が大切に想う人と、心から理解し合える関係を築きたい
そんな方に向けて、「マインドフルな共感で良好な人間関係を築く方法」を紹介していきます。
あなたの心が、少しでも軽くなるような情報をお伝えできれば幸いです。
1.共感の定義~共感とは~

まずは、共感とは何かについて簡単に解説します。

あのさ、今日上司に褒められたんだ!



そうなんだー! 良かったじゃーん!
最近あなた、遅くまで頑張ってたもんね!
Bさんは、Aさんの嬉しそうな気持ちを自然に感じ取り、同じように嬉しい気持ちを表現していますよね。
また、「遅くまで頑張ってたもんね」と、相手の状況に理解を示す言葉も添えています。
Bさんから共感の言葉が返ってくることで、Aさんは「気持ちを分かってくれたんだね!」と感じ、両者の信頼関係は深まり、心の絆も強くなります。
共感の定義
社会心理学者のマーティン・ホフマン(Martin Hoffman)は、「共感」とは、
自分自身よりも他の人の状況によりふさわしい感情反応
引用:登張 (2023)
と定義しています。
「共感」とは「相手の感情を自分のことのように感じて反応すること」だと言えます。
2.共感が生きづらさにつながるとき


それでは、「共感力が生きづらさにつながってしまう」場合の具体例を紹介していきます。
2-1.生きづらくなる共感①~パートナーシップ~



それでさ、日曜日、一緒に買い物に行くって約束してたけど、疲れてるから家でゆっくりしたいんだ。いいかな…?



あ、もちろんだよ!
頑張ってたんだし、買い物に行くより休みたいよね…



(約束してたのに…)
この例では、Bさんは「一緒に買物に行きたい」という自分の気持ちよりも、「休みたい」というAさんの気持ちを優先しています。
たまにであれば良いかもしれませんが、このような関係が続くと、Bさんの不満が溜まるばかりになりそうですよね。
自分の気持ちを満たしつつ、相手の要求も大切にするにはどうすればいいのでしょうか…?
2-1.生きづらくなる共感②~職場の人間関係~
今度は、別の例を挙げてみます。



先輩、さっきのプレゼン、緊張で全然ダメでした…。
私、向いてないのかなって思います…。



最初は誰でも緊張するよねー!
でも、全然そんな様子は見えなかったよ?
私の最初に比べたら、Cさんの方が全然うまくできてた(笑)
次のプレゼン、また一緒に準備しようよ!



(私のプレゼンの準備もやばいけど、放っておけないし…)
この例では、落ち込んでいるCさんに対して、Dさんが共感を示しています。
Dさんは「放っておけない」気持ちが強く、客観的に見ても、すごく優しい、頼れる先輩ですよね。
ただ、自分の時間や労力を削ってまで、後輩をサポートしたい、という姿勢が見られるため、ちょっと心配になります…。
自分の負担を過剰に増やすことなく、誰かのフォローも上手く進めるには、どうすればいいのでしょうか…?
3.マインドフルな共感


それでは、マインドフルネスを取り入れた「マインドフルな共感」によって、どのように会話の流れが変わるか、具体例を挙げてみます。
3-1.マインドフルな共感①~パートナーシップ~



日曜日、一緒に買い物に行くって約束してたけど、疲れてるから家でゆっくりしたいんだ。いいかな…?



(え、ショック…楽しみにしてたのに…。)



(でも、休みたい気持ちもすごく分かる。)



頑張ってたんだし、買い物に行くより休みたいよね・・・。
ただ、私、すごく楽しみにしてたんだ。だから、また来月とかで、休みが合う日に、一緒に外出できたら嬉しいよ。
ポイント
Bさんはすぐに返事をせずに、ひと呼吸おいて、自分の心の声に耳を傾けています。
そのひと呼吸の中でBさんは、
- 「家で過ごしたい」というAさんの気持ち
- 「一緒に外出したい」という自分の気持ち
どちらも大切なものとして尊重し、両方を叶えたいと考えています。
その結果、相手を責めることなく、自分の気持ちを誠実に伝え、「また今度一緒に行けたら嬉しいな」と、提案することができています。
3-2.マインドフルな共感②~職場の人間関係~



先輩、さっきのプレゼン、緊張で全然ダメでした…。
私、向いてないのかなって思います…。



(これはフォローしなきゃな…)



(いやいや、自分のプレゼンの準備もやばいんだった・・・)



そっかー、緊張したんだねー!
最初はみんなそうだから、大丈夫!
ただ、私も自分のプレゼン準備あるからさ、17時以降にじっくり話聞いていいかな?
その時に、一緒に考えよう!
ポイント
この例でも、Dさんは、ひと呼吸おいて、相手と自分の両方の気持ちに、客観的に意識を向けています。
そのひと呼吸の間にDさんは、
- Cさんは今、落ち込んでいて気持ちに全く余裕がない
- 自分は、今はしっかり話を聞くのは難しい
と、双方の状況を冷静に捉え、優先順位を判断しています。
困っているCさんにとっては、一見すると冷たく感じられるかもしれませんが、Dさんが自分のキャパシティーを確認した上で約束しているため、むしろ、誠実さと信頼感が伝わる返事になっています。
マインドフルネスを取り入れることで、「相手と自分のどちらも大切にする」コミュニケーションが生まれ、より深い信頼関係を育てていくことが可能になります。
4.マインドフルな共感で自分を守る方法


それでは、マインドフルな共感をどのように実践するかについて、ステップごとに解説します。



ねぇ、今さ、ちょっと話せる?
バイト先の店長が、最近またヤバくてさー、今度こそ辞めようかと思ってしまったよ…



(Eちゃん、ついに辞める決心がついたかな…)



(今日は私も疲れすぎてる…。Eちゃんの悩みも聞いてあげたいけど、今からはさすがに辛い…。)





Eちゃん、私も今日はちょっと疲れててさ…。実は、今からもう寝ようと思ってたんだ。ゆっくり話聴きたいからさ、明日にしてもらえないかな?
ごめんね!



そうだったの?! ごめん…。調子大丈夫?
今日はゆっくり休んでね!
まとめ
共感というと、誰かと同じ感情を共有する、といったイメージがある人が多いと思います。
確かに、何でも分かり合える関係って、すごく居心地いいですよね。
ただ、私たちが目標にしたいのは「相互理解」ではないでしょうか?
つまり、たとえ、何でも分かり合える親友だとしても、あなたの心や体の状況を無視して良いわけではありません。
あなたの心や体は、完全にあなたのものです。
あなたは、あなたの行動を自由に選択できる権利があります。
まずは、あなたが、あなた自身の心や体の声を聴いてあげる優しい気持ちと、そのための時間を毎日少しずつでも確保することが大切です。
参考文献
- 登張 真稲 (2023). 共感の概念と理論、役割について. 生活科学研究, 45, 41-50, 2023-03-31, 文教大学. 10.15034/00008183
- 松尾 良和 ほか (2008). Hoffmanの共感喚起理論の概観. 広島大学大学院心理臨床教育研究センター紀要, 6, 103-112, 2008-03-20, 広島大学大学院教育学研究科附属心理臨床教育研究センター. https://doi.org/10.15027/23564